フェルトおっさん

nozaki 4 Comments »






某日、私は総合病院のロビーにいた。

診察を受けた後は、会計で呼ばれるまで待たなければならない。

気長に待つか、と、ソファに腰掛けたその時であった。












なにか周りの空気がおかしい。














辺りを見回すと、

周りにいる人達が皆、

ある一方を見てクスクスと失笑しているではないか。








私はその時、眼鏡等を装着しておらず何も見えなかったが、

その方向から

徐々にこちらへと近付いてくるおっさんの頭に何か違和感を覚えた。









かなりの至近距離にて、おっさんの姿を確認したその時!

皆の失笑の謎が解けた。
















おっさんは、

ハゲという名の邪悪に冒された頭部を隠すため、

邪悪をフェルトで封印していたのだ。

















そう、つまりは頭にフェルトを貼付けているのだ。

手作りホームメイドのヅラである。










手垢の温もりすら感じるそれは、

アホアホマンのディティールに酷似している。










耳の辺りは、きちんと丁寧に切り抜かれている。

秀逸なハサミ使いを思わせる仕事ぶりである。









しかも驚くべき事に

生え際の辺りには、

細長く切った肌色のフェルトが貼られていた。











多分「分け目」であろう。

おっさんは髪を分けたかったのであろう。















颯爽と病院内を闊歩するおっさん。





命を吹き込まれたフェルトを纏うおっさんの姿は

雄々しく、そして美しくさえあった。






       

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